フラメンコ
若い時は何時でもフラメンコ踊っていた
行く先々で女達が歓迎してくれた
ギターも何もなくても
俺が踊れば その体から音が流れ出た
人が居ようと居まいと 何時でも踊っていた
身体中の汗と情熱で
もしお前が先に死んだら
最後の住所を誰かに伝えてくれ
きっと仲間を連れて
フラメンコ踊りに行くよ
そして最後くらい綺麗な顔で死んでゆくんだ
誰にも負けないように
化粧したり着飾ったり がんばっているうちに
本当の姿を見失って了ったけど
カモメよ 俺が死んだら皆に伝えてくれ
最後までその汗と情熱を忘れなかったことを
若い時のようには踊れなくなったけど
海の見える丘の上で死んでいった奴らのことを
思いながら静かなフラメンコ
踊っているよ
老いぼれた貴婦人のように
アンティークな男の詩
占領下の時代に生まれて
昭和という時代の真中で
ひとり立ち止まって了った男には
パイプの煙とブランデー
メリーゴーランドの木馬に跨って
古き時代の風景の中を回り続ける
行くあてのない男には
ネッカチーフとベレー帽
通り過ぎる走馬灯の人影に
大声で叫んでいるのは誰
そんな愛に見放された男には
過ぎ去った時のかけらとブリキの涙
明日を持たない男達は
麦畑を流れる微風みたいに
生きたかったんだな
だけど アンティークな男は
俺じゃない‼︎
一週間の形而上学
色とりどりの積み木を使って
楽しそーに家を建てていた僕は
幼い子供みたいに
せっかく出来かけた家を
壊して了ったのです
僕は無邪気な天使みたいに
窓の隙間をするりと抜けて
若葉の匂いの混ざった外の空気を
胸いっぱいに吸い込んでいると
何時の間にかネコの姿になった僕は
あの橋の前に立っていたのです
幾つもの一週間が鎖の様に繋がった
延々と続く長い橋を
ネコになった僕は綱渡りの様に
渡り始めたのです
その橋は僕の人生の長さだけ延びていて
その橋を全部渡り終えても
きっと僕には
あの積み木の家は完成出来そーもないのです
ハイジャンプ
ぶらさがった柿に ピョーン
ぶらさがったザクロにだって ピョョョーン
じゅくしたイチジクだって ピョョョーン
中学生になった頃
一丁前のハイジャンパーに
なっていたんだなー
渋柿には泣かされたけどなー
レッツ
ピョョョーン
みんなみんな宇宙人
テレビと冷蔵庫
テレビもパソコンも消えていると
その主は寝て了ったのか
あるいは 死んで了ったのかと
疑われて了うのが嫌なので
何時もテレビだけはつけっぱなしなのです
オーイッて呼んでも
テレビが返事をする訳でもないのに
そのテレビの主は一日の殆どを
テレビの中で暮らしているのです
時々現実の世界に這い出して来たものの
すぐに
冷蔵庫の中へと姿を消して了うのです
テレビのスイッチを消すのは
とても勇気がいるので
その後私は何処へ行けばいいのか戸惑って了って
とりあへず
冷蔵庫の中に首を突っ込んだままでいるのですが
オーイッて呼んでも
冷蔵庫が返事をする訳もなく
しかたがないから
又テレビの中に帰って行くのです
(洗タク機に頭を突っ込むと
目が回るので
やめておきましょう)