天井と床
腕枕で天井を見つめていると
だんだん自分の存在が消えていって
俺は天井と向かい合っている床になってゆく
やがて俺という存在が無くなって
そこには天井と床だけしかなくなっているのに
時々横を通る人々がオレのことを
のぞき込みながら通り過ぎてゆく
オレという人間の臭いでも残っているのでしょうか
人々がオレの顔をのぞき込んでゆくのは
オレの気のせいかも知れない
洗タクカゴをぶらさげたカミさんが
オレの顔をのぞき込む
ケータイ・ゲームをしながら孫が忍び足でやって来る
オレは床だと言っているだろ
オレは床なんだよ
やれやれこんなことでは
オレが天井になれるまで
あと十年はかかるだろう