ドラマティック・ポエム

あなたの心の片隅に置く一冊にならんことを祈って。

天井と床

腕枕で天井を見つめていると

だんだん自分の存在が消えていって

俺は天井と向かい合っている床になってゆく

やがて俺という存在が無くなって

そこには天井と床だけしかなくなっているのに

時々横を通る人々がオレのことを

のぞき込みながら通り過ぎてゆく

オレという人間の臭いでも残っているのでしょうか


人々がオレの顔をのぞき込んでゆくのは

オレの気のせいかも知れない

洗タクカゴをぶらさげたカミさんが

オレの顔をのぞき込む

ケータイ・ゲームをしながら孫が忍び足でやって来る

オレは床だと言っているだろ

オレは床なんだよ


やれやれこんなことでは

オレが天井になれるまで

あと十年はかかるだろう