ドラマティック・ポエム

あなたの心の片隅に置く一冊にならんことを祈って。

住所(アドレス・アイデンティティー)

私の心は上の空  みたいな所にありまして

風吹く街を行く蝶々みたいに

時には他人の肩に止まって

生きている人達が住んでいる住所を

訪ね歩いているのですが

いくら尋ねても家族の自慢話や

昔の想い出話するばかりで

本当の住所ははぐらかされるばかりで


かと言って私の住む世界には住所がなくて

たぶん現実の世界とは障子一枚へだてた所にあって

その障子の裏に回ると私の姿は消えていて

突然あなたの住所はと聞かれましても

とんと心当たりはございませんが


実のところ私の心には不満がいっぱい吹き荒れていて不満という風に常に吹かれて荒野をさまよい歩くので

とても仕事なんかする気にもなれなくて

きっとたぶん皆さんの住む世界には

私のアドレスはなくて

少なくとも私といたしましては

せめて意地の張り合いのない所に

住もうということになりました


だいぶ話が曲がりくねって了いましたが

もし私に御用のある方は

あなたの部屋の鏡の前で

三回手を振ってお待ち下さい

特にアッカンベをしてお待ち頂けると

本当の私の姿がよく見えてくるかと思います