ドラマティック・ポエム

あなたの心の片隅に置く一冊にならんことを祈って。

2018-08-15から1日間の記事一覧

エデンの人々 I

若い頃は他人の役に立つ仕事がしたいと思ったこともあるけど今ではそんな夢を見るより目の前にある酒を飲むだけの毎日です本当は何も出来ないのに何でもこなせるように振舞ったりしていましたが実のところ俺の仕事はホロ酔い加減が調度いいのできびしく仕込…

エデンの人々 II

毎日酒を飲みタバコを吸い何の努力もしないでただひたすら有名になりたいという夢ばかりみているうちにとうに半世紀も過ぎてしまいましたがたぶん長生きし過ぎたのでしょう 気がついたら自分らしくもない他の時代に迷い込んでいたのです寒い冬には居心地の良…

住所(アドレス・アイデンティティー)

私の心は上の空 みたいな所にありまして風吹く街を行く蝶々みたいに時には他人の肩に止まって生きている人達が住んでいる住所を訪ね歩いているのですがいくら尋ねても家族の自慢話や昔の想い出話するばかりで本当の住所ははぐらかされるばかりでかと言って私…

老人と人形

ある日老人の部屋から日本人形のあやちゃんが 消えてしまいました街ゆく若い女の子に 声をかける老人をあの病気がちの瞳が 見透かしていたのでしょうそんな老人を見限ってあやちゃん人形はきっと 家出したのです彼女は人形ではなくて 本当の人間だったのかも…

ターミナル

駅前にたたずむ車達をバスのクラクションが追い立てるそんな夕暮れ時 ターミナルに着いたバスからにぎやかに降りたつ学生たち僕とすれちがう学生たちは皆若い僕だけが年を取ってゆく若者達はてんでんに散ってゆく焼肉屋の夜のバイトへ彼氏の待つアパートへと…

名前(ネイム アイデンティティー)

自分が何をする者かもわからなくなって自分の名前さえも思い出せなくなって途方に暮れる毎日が続いておりましたたった一人島に暮らす者にとって名前など必要もないのですがたとえば遠い国を旅する人々に何処へ行くのかと尋ねても名前を持たない人々には特に…

天井と床

腕枕で天井を見つめているとだんだん自分の存在が消えていって俺は天井と向かい合っている床になってゆくやがて俺という存在が無くなってそこには天井と床だけしかなくなっているのに時々横を通る人々がオレのことをのぞき込みながら通り過ぎてゆくオレとい…