ドラマティック・ポエム

あなたの心の片隅に置く一冊にならんことを祈って。

フラメンコ

若い時は何時でもフラメンコ踊っていた行く先々で女達が歓迎してくれたギターも何もなくても俺が踊れば その体から音が流れ出た人が居ようと居まいと 何時でも踊っていた身体中の汗と情熱でもしお前が先に死んだら最後の住所を誰かに伝えてくれきっと仲間を…

ゆううつな時

アインシュタインにもなれないし月にも太陽にもなれないし過去を振り返れば 恥ずかしい事ばっかりで未来なんかも見えないし頭の中にはコンピューターのチップが 一枚もないし一瞬のヒラメキさえ持っていないし自分の手で一個づつ 文字を書くしかないしアイン…

アンティークな男の詩

占領下の時代に生まれて昭和という時代の真中でひとり立ち止まって了った男にはパイプの煙とブランデーメリーゴーランドの木馬に跨って古き時代の風景の中を回り続ける行くあてのない男にはネッカチーフとベレー帽通り過ぎる走馬灯の人影に大声で叫んでいる…

一週間の形而上学

色とりどりの積み木を使って楽しそーに家を建てていた僕は幼い子供みたいにせっかく出来かけた家を壊して了ったのです僕は無邪気な天使みたいに窓の隙間をするりと抜けて若葉の匂いの混ざった外の空気を胸いっぱいに吸い込んでいると何時の間にかネコの姿に…

ハイジャンプ

ぶらさがった柿に ピョーンぶらさがったザクロにだって ピョョョーンじゅくしたイチジクだって ピョョョーン中学生になった頃一丁前のハイジャンパーになっていたんだなー渋柿には泣かされたけどなーレッツピョョョーン

みんなみんな宇宙人

おまわりさんも どろぼーさんも みんなみんな宇宙人パートさんも 派遣さんも みんなみんな宇宙人(パートを二つ掛持ちする宇宙人なんて他の星にもいるのかな)キックボクサーも ボクさあって言う人も みんなみんな宇宙人あの人も宇宙人の一人なんて ヤレヤレサ…

テレビと冷蔵庫

テレビもパソコンも消えているとその主は寝て了ったのかあるいは 死んで了ったのかと疑われて了うのが嫌なので何時もテレビだけはつけっぱなしなのですオーイッて呼んでもテレビが返事をする訳でもないのにそのテレビの主は一日の殆どをテレビの中で暮らして…

帰って来た浦島

海ガメさんがやって来て二階の竜宮に行きましょう毎日歌って踊って遊びましょう乙姫さんの豊な胸が忘れられないよー看護師さーん 早くカメさんに乗せてくれー太郎さんはホームの一室で夕べも騒いでいました二階の竜宮の周囲には赤ちゃん達がいっぱい泳いでい…

デカショーおじさん Ⅱ

シベリア帰りのデカショー伯父さんはハルさんと一緒になってから 少し落ち着いた電気屋さんの商売も始めた時々僕を映画館に連れて行くようにもなった土曜の夜に三人で連れ立って 東映の映画館に行っただけどシベリア帰りのデカショー伯父さんは 時々荒れる晩…

かーちゃんと酔っぱらい

いつものー天気なかーちゃんの目が泳いだその酔っぱらいの話に一生懸命に相槌を打ちながらかーちゃんは僕を取りもどすチャンスをねらっていた僕は道端で酔っぱらいのおじさんに捕まった僕の腕をつかんで離さないおじさんは訳の解らない事をわめき散らしてい…

月曜の朝

車のタイヤが相変わらず砂利を蹴って地面と喧嘩しながら走り出す月曜の朝後の車がピッタリとくっついて走るうざい奴僕はおもむろにタバコをくわえ火をつけるお気に入りのカンコーヒーを片手にわざとのんびり走るとめどなくやって来る一週間という新しい波の…

惑星、パッカー車

町中にゴミがあふれているパッカー車は毎日気が狂う程走りまわるスピーカーでも自転車でも何でもかんでもガリガリ ガリガリとかみくだいて飲み込んでゆく町にはあまりにもゴミが多過ぎてパッカー車の胃袋にはブラックホールがガン細胞のように増殖して巨大に…

プール

プールに石を投げ込んで遊んでいた今度はあの大っきな石を投げ込んでみたくなった両手で胸に抱える程の大っきな石をよいしょって投げ込んだその大っきな石は ブクブク ブクブクって大きな泡を立てながらゆっくりと水中に沈んでいったその石は何時までもブク…

スナック

夕もやの流れる頃 17号線ぞいの寂れた路地を入ると 古びたネオンが灯るスナックがある その店の扉を開くとカウンターの中では ロングドレスの似合うクラブあがりのママがニンマリと笑う 実は彼女は僕の愛人なんです もう一人の若いヘルプの秋ちゃんは僕のこ…

通せんぼ

あなたが帰るその道のひとり咲いてるスミレ草風もないのに震えているあなたのゆく道 帰り道両手広げて通せんぼきっとあなたを通せんぼあなたが帰る路地裏で小さな両手で通せんぼあなたの背中のランドセル怒った顔で振り向いたひとりとぼとぼ帰る道空に描いた…

砂時計の都市

屈たくのない営みを続けてきた都市平和な日々と繁栄を誇った都市家族の愛とやさしさを育んだ都市が砂時計の砂のように少しずつ崩れて砂丘に開いた小さな穴から渦を巻きながら落ちてゆく都市を彩ったビルも道路も橋も川もネオンも看板もそれらが少しずつ砂つ…

エデンの人々 I

若い頃は他人の役に立つ仕事がしたいと思ったこともあるけど今ではそんな夢を見るより目の前にある酒を飲むだけの毎日です本当は何も出来ないのに何でもこなせるように振舞ったりしていましたが実のところ俺の仕事はホロ酔い加減が調度いいのできびしく仕込…

エデンの人々 II

毎日酒を飲みタバコを吸い何の努力もしないでただひたすら有名になりたいという夢ばかりみているうちにとうに半世紀も過ぎてしまいましたがたぶん長生きし過ぎたのでしょう 気がついたら自分らしくもない他の時代に迷い込んでいたのです寒い冬には居心地の良…

住所(アドレス・アイデンティティー)

私の心は上の空 みたいな所にありまして風吹く街を行く蝶々みたいに時には他人の肩に止まって生きている人達が住んでいる住所を訪ね歩いているのですがいくら尋ねても家族の自慢話や昔の想い出話するばかりで本当の住所ははぐらかされるばかりでかと言って私…

老人と人形

ある日老人の部屋から日本人形のあやちゃんが 消えてしまいました街ゆく若い女の子に 声をかける老人をあの病気がちの瞳が 見透かしていたのでしょうそんな老人を見限ってあやちゃん人形はきっと 家出したのです彼女は人形ではなくて 本当の人間だったのかも…

ターミナル

駅前にたたずむ車達をバスのクラクションが追い立てるそんな夕暮れ時 ターミナルに着いたバスからにぎやかに降りたつ学生たち僕とすれちがう学生たちは皆若い僕だけが年を取ってゆく若者達はてんでんに散ってゆく焼肉屋の夜のバイトへ彼氏の待つアパートへと…

名前(ネイム アイデンティティー)

自分が何をする者かもわからなくなって自分の名前さえも思い出せなくなって途方に暮れる毎日が続いておりましたたった一人島に暮らす者にとって名前など必要もないのですがたとえば遠い国を旅する人々に何処へ行くのかと尋ねても名前を持たない人々には特に…

天井と床

腕枕で天井を見つめているとだんだん自分の存在が消えていって俺は天井と向かい合っている床になってゆくやがて俺という存在が無くなってそこには天井と床だけしかなくなっているのに時々横を通る人々がオレのことをのぞき込みながら通り過ぎてゆくオレとい…

デカショーおじさん I

シベリアから引き揚げて来た伯父さんをかーちゃんと二人で上野駅に出迎えた真黒いサングラスの伯父さんは氷の様に冷たい顔をしていたそれがシベリア帰りのデカショー伯父さんだった小学校の入学式の日僕は行くのが嫌だと言ってゴネた伯父さんがしょーがねー…

ギブミー・チョコレート

もーすぐ出てくるぞーって 誰かが囁くこのスタートダッシュのフライングは許される米兵の姿が現れる瞬間を今か今かと待っているその姿が現れたとたんワァーッと子供達が一斉に米兵を取り囲むギブミー・チョコレートギブミー・チョコレート米兵は待っていたよ…

チョコボール

たまには休肝日薬と同じ数だけ食べちゃおチョコボールいつつおやおや何かおかしいぞ胃の薬のんでも吐いちゃうし血液サラサラの薬飲んでいるけどネバっこい性格なおらないしコレステロール下げる薬に血圧下げる薬ついでにテンションもさがっちゃった何かいい…

まどろみ

階段の踊り場でいつも子供達が楽しそうに遊んでいた僕は夢の中でその階段を一段づつ上がってゆく僕が近づいてゆくと子供達の顔が僕を無視して何処か遠くの方を見ていた昼さがりの午後にまどろみから目ざめると突然玄関のチャイムが鳴った踊り場で遊ぶ子供達…

ヘビ

隣の草むらにはヘビが棲んでいるそのヘビは時折見かける人間の背中に僧悪の眼をむける カマ首をもたげ真っ赤な眼を見開いてむなしい叫びをあげながら月に向かって激しいダンスのステップを踏む街なかに棲むヘビは草原で野ネズミを追った記憶が満月の夜に疼き…

ラナンキュラスの片隅で

マスターのフライパンで踊るガーリックの香りが店中に広がって東洋のエキゾチックな世界と出会うラナンキュラスの片隅でガラス扉の向こうから木枯らしの近づく音を聞きながらそぅと目を閉じて僕の鼻腔の奥深くの幻の小部屋でイスに腰かけ 古びたランプに明か…

スーパーじいさん

街を歩くと自転車にまたがった じいさんが行く男の浪漫 カゴに詰込んで大正の香り召しませ ランラランスーパーに入っても夢遊病者のように歩く じいさんがいるカフェに入っても店の片隅で 居眠りしてるじいさんがいるポケットからお札が落ちている ランララ…