2018-08-05 橋の下の物語 I 橋の下を照らす 月明かりの中を 未来を見失った うつろな目をした人が 川面を流れてゆく 時折 自分のいる岸に 引っかかりそうな死体を 男は長いサオで 流れの真中に 押し返す 死体が自分のいる岸に ゾンビのように這い上がって来るかもしれない そんな恐怖にかられて 自分が川で溺れたら どんな海に たどり着くのだろう そんな夜は 逃げた女の名前を 大声で呼びながら 酔い痴れて 寝むるだけ 遠くで あの女の騒ぐ声が聞こえる 今夜はやけに暑い