ドラマティック・ポエム

あなたの心の片隅に置く一冊にならんことを祈って。

橋の下の物語 I

橋の下を照らす 月明かりの中を

未来を見失った うつろな目をした人が

川面を流れてゆく

時折 自分のいる岸に

引っかかりそうな死体を

男は長いサオで 流れの真中に

押し返す

死体が自分のいる岸に

ゾンビのように這い上がって来るかもしれない

そんな恐怖にかられて

 

自分が川で溺れたら

どんな海に たどり着くのだろう

 

そんな夜は 逃げた女の名前を

大声で呼びながら

酔い痴れて 寝むるだけ

 

遠くで あの女の騒ぐ声が聞こえる

今夜はやけに暑い