ドラマティック・ポエム

あなたの心の片隅に置く一冊にならんことを祈って。

2018-08-05から1日間の記事一覧

ラナンキュラスの片隅で

マスターのフライパンで踊るガーリックの香りが店中に広がって東洋のエキゾチックな世界と出会うラナンキュラスの片隅でガラス扉の向こうから木枯らしの近づく音を聞きながらそぅと目を閉じて僕の鼻腔の奥深くの幻の小部屋でイスに腰かけ 古びたランプに明か…

スーパーじいさん

街を歩くと自転車にまたがった じいさんが行く男の浪漫 カゴに詰込んで大正の香り召しませ ランラランスーパーに入っても夢遊病者のように歩く じいさんがいるカフェに入っても店の片隅で 居眠りしてるじいさんがいるポケットからお札が落ちている ランララ…

ゴッキー

あいつはちょっとカラに閉じこもっている所はありますが決して悪い奴ではありません昨日なんか大好物のバナナ食べ過ぎて酔っ払いのおっさんみたいに廊下にひっくり返っていたり夜は夜で同居中の俺の病を気遣って長い触覚動かしながら月に向かってお祈りして…

誰れもいない部屋

誰れもいない部屋でレコードが回るタンゴの曲に合わせて二匹のハエが踊る窓から差し込む光のオーロラのカーテンの中で二匹のハエが踊る男と女のシルエットになって赤いドレスと黒いスーツが脚を絡め合いながらタンゴを踊るやがて時は流れ誰れもいない部屋は…

冷たい空気さん

ベッド下の隙間に手を伸ばしたら手マリぐらいの大きさの冷たい空気さんがいました冷たい空気さんは照れ屋な僕みたいにすぐに姿を隠したがるなんだか温もりがあってフワッとしていて 生きものみたいですあんたはうちの家具の隙間に棲んでいる 家具の精かしら…

ジョーガリアの想い出

オーストラリアに帰る日僕を強く抱きしめて涙をポロポロ流していたジョーガリア水道のないへんぴな所で雨水をタンクに集めて奥さんと仲良く暮らしているジョーガリア小学生の女の子と意気投合しておもいっきりはしゃいでいた無邪気なジョーガリアお尻の大き…

咳をする女

あんたの母ちゃんは真冬の冷たい川の中寒さにふるえて死んでしまったあんたの母ちゃんは 死んだ父ちゃんの後を追うようにエッヘン オッホン エッホッホあんたは父ちゃん母ちゃん死んでから富山にもらわれていったよたった二年で飛び出したけど兄貴の働くスナ…

時刻(とき)のサーファー

一週間という波のうねりが次から次へと やって来る押し寄せる波に乗ってどこまでも行く俺たちはみんな 時刻のサーファーだその波のひとつひとつをサーフィンのように乗り越える両手広げ 腰でバランスとりながら一週間という波を乗りこえる一定速度でやってく…

一週間の波

よせては返えす波のように新しい一週間が次から次へとやってくるたゆまない一週間の波が僕の白い砂浜をくずしてゆく押し寄せてくる一週間の波から僕は逃れることが出来ない過ぎ去った幾つもの一週間が僕の心を連れ去ってゆく幾千の波のひとつにすぎない今日…

夜空のつり人

夜空の星の海に 舟を漕ぎ出してつり人は 永遠の長さを計りながらつり糸をたらしてゆくつり人は永遠の二乗を頭に浮かべては宇宙の果てに想いをはせるつり人は千と一夜の間夜毎 一万光年の長さの光の糸を たらし続けているのだがコバルトブルーの銀河の底はま…

ゴーストの棲む街

街に暗闇が訪れる頃道端にうずくまる二つの影の顔だけが仄かに青白く光っている青白く光る顔と顔が向き合って時折「ケケケッ」と笑う通り過ぎる僕のことなど全く気にもせず路地のあっちからも こっちからも青白く光る顔の影法師が僕の方にやって来るあの二つ…

墓守人

真夏のあつい夜荒野を下ったフクロウが寺の境内にやって来た360度 首を廻らせてどこの国にもありがちな迷信という木に止まった群れなす墓を守ろうと真夏のあつい夜寺も墓もぐっすりと眠りについていた今朝のそーぎに供えられた一弁酒飲みほして真夏のあつい…

マリ子の部屋

マリ子の部屋にマリ子がいませんマリ子は何処へ行ったのでしょうマリ子の部屋にマリ子がいませんきっと僕を探して道に迷っているのでしょうマリ子の部屋にマリ子はいないけどマリ子のお気に入りの鏡が残っていますマリ子の部屋にマリ子はいないけど鏡に映る…

紙芝居

紙芝居のおじさんが片足を曳ずりながらドンガラガッカ ドンガラガッカと町内を練り歩くゴム跳びなんかしていた子供達がおじさんの後から ぞろぞろとくっついて歩く大きなタイコを腹に抱えて歩く足の悪いおじさんの体が傾いているのをしっかり見逃すこともな…

橋の下の物語 III

喪服姿のあの男が肩にでっかいラジカセ担いであの河原にやって来た橋の下に射込む月の光の中でレクイエムのダンスを踊るスラム育ちのあの男が愛した女の弔いにダンスを踊る薄暗い路地裏で死んでいた自分をそんな自分を変えてくれた女に何もしてやれなかった…

橋の下の物語 II

ある日の夜したたか酒に酔った女はアフリカンダンス踊りながらその河原にやってきた大蛇のような眼で狂ったように騒いでいる女は酔い泥れた男の小屋に飛び込んだ自分の名を呼ぶ男のヒゲ面を愛おしそうに舐め回して女は小屋中に火を放った炎の匂いに怯えたネ…

橋の下の物語 I

橋の下を照らす 月明かりの中を 未来を見失った うつろな目をした人が 川面を流れてゆく 時折 自分のいる岸に 引っかかりそうな死体を 男は長いサオで 流れの真中に 押し返す 死体が自分のいる岸に ゾンビのように這い上がって来るかもしれない そんな恐怖に…

俺とマサやん

小学生だった俺とマサやんは駅の構内から盗み出したレールの切れっぱしを自転車のけつに積んでよいしょ ワッショ と二人で売りに行ったんだそんな日は三本五十円の東映映画を観たあと新ちゃんの店で一杯三十円のラーメンを食べるのが俺とマサやんの無情の楽…

七里の夏休み

カシクばあちゃんの入れ歯が落ちたぼくはゲラゲラ笑ったもう一回やってとせがむカシクばあちゃんは大きく口を開ける口の中で入れ歯がガタッと落ちた何度も笑った何度でもやってくれるばあちゃんとニワトリのえさ作りえーとそれからそーだじいちゃんとブタ小…