橋の下の物語 III
喪服姿のあの男が
肩にでっかいラジカセ担いで
あの河原にやって来た
橋の下に射込む月の光の中で
レクイエムのダンスを踊る
スラム育ちのあの男が
愛した女の弔いにダンスを踊る
薄暗い路地裏で死んでいた自分を
そんな自分を変えてくれた女に
何もしてやれなかったと悔いながら
男はダンスを踊る
千年程の優しさも
ネコの温もり程の役に立たなかったことを
悔いながら ダンスを踊る
黒コゲになった女の骸を
そっと川に流して
レクイエムのダンスを踊る
スラム育ちのあの男が
愛した女の弔いに
ダンスを踊る
橋の下に射込む月の光の中で