ドラマティック・ポエム

あなたの心の片隅に置く一冊にならんことを祈って。

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ゴーストの棲む街

街に暗闇が訪れる頃道端にうずくまる二つの影の顔だけが仄かに青白く光っている青白く光る顔と顔が向き合って時折「ケケケッ」と笑う通り過ぎる僕のことなど全く気にもせず路地のあっちからも こっちからも青白く光る顔の影法師が僕の方にやって来るあの二つ…

墓守人

真夏のあつい夜荒野を下ったフクロウが寺の境内にやって来た360度 首を廻らせてどこの国にもありがちな迷信という木に止まった群れなす墓を守ろうと真夏のあつい夜寺も墓もぐっすりと眠りについていた今朝のそーぎに供えられた一弁酒飲みほして真夏のあつい…

マリ子の部屋

マリ子の部屋にマリ子がいませんマリ子は何処へ行ったのでしょうマリ子の部屋にマリ子がいませんきっと僕を探して道に迷っているのでしょうマリ子の部屋にマリ子はいないけどマリ子のお気に入りの鏡が残っていますマリ子の部屋にマリ子はいないけど鏡に映る…

紙芝居

紙芝居のおじさんが片足を曳ずりながらドンガラガッカ ドンガラガッカと町内を練り歩くゴム跳びなんかしていた子供達がおじさんの後から ぞろぞろとくっついて歩く大きなタイコを腹に抱えて歩く足の悪いおじさんの体が傾いているのをしっかり見逃すこともな…

橋の下の物語 III

喪服姿のあの男が肩にでっかいラジカセ担いであの河原にやって来た橋の下に射込む月の光の中でレクイエムのダンスを踊るスラム育ちのあの男が愛した女の弔いにダンスを踊る薄暗い路地裏で死んでいた自分をそんな自分を変えてくれた女に何もしてやれなかった…

橋の下の物語 II

ある日の夜したたか酒に酔った女はアフリカンダンス踊りながらその河原にやってきた大蛇のような眼で狂ったように騒いでいる女は酔い泥れた男の小屋に飛び込んだ自分の名を呼ぶ男のヒゲ面を愛おしそうに舐め回して女は小屋中に火を放った炎の匂いに怯えたネ…

橋の下の物語 I

橋の下を照らす 月明かりの中を 未来を見失った うつろな目をした人が 川面を流れてゆく 時折 自分のいる岸に 引っかかりそうな死体を 男は長いサオで 流れの真中に 押し返す 死体が自分のいる岸に ゾンビのように這い上がって来るかもしれない そんな恐怖に…

俺とマサやん

小学生だった俺とマサやんは駅の構内から盗み出したレールの切れっぱしを自転車のけつに積んでよいしょ ワッショ と二人で売りに行ったんだそんな日は三本五十円の東映映画を観たあと新ちゃんの店で一杯三十円のラーメンを食べるのが俺とマサやんの無情の楽…

七里の夏休み

カシクばあちゃんの入れ歯が落ちたぼくはゲラゲラ笑ったもう一回やってとせがむカシクばあちゃんは大きく口を開ける口の中で入れ歯がガタッと落ちた何度も笑った何度でもやってくれるばあちゃんとニワトリのえさ作りえーとそれからそーだじいちゃんとブタ小…